子どもが"世界"を基準に考えるために大切なこと

夏休み、ベルリンに8日間行ってきました。
次男がデザインの本場を体験するためです。わたしは、引率という名の「ただの海外へ行きたい人」です(笑)。

 

ベルリンへ行くことにした理由

今回の旅を決意したのは、夏休み前に、美大を目指す次男が「絵を描きたい」という衝動以上に、「やらなくては」という義務感で勉強を続けているように感じたことがきっかけでした。美大を目指そうと思うと、一般受験よりも受験準備の期間が本当に長いんですね、わたしも初めて知りましたが。高校入学と同時にデッサンやデザインがスタートしました。

受験用の絵に、どんどん顔が沈んでいく様子を見て、これまでときどき口にしていたことから推測して、「海外へ行ってみる?」と聞いたら、顔がパァっと輝き、「行く!行きたい!!」と即答したので、連れて行くことにしました。

わたしとしては、「何かの目標に向かうとき、行き詰まったら努力と我慢で乗り切るだけではなく、何か工夫をして、決断して、思い切ったことをしてもいい」ということを教えたかったので、それ以上、どこで何をしようと、もしくは、何もしなかろうといいと思っていました。また、世界の広さを知り、「受験をしない」という決断に向かってもいいと思いました。

 

ところで、この旅のことを言うと、突然決めて突然動いたので、どうやら、「佳織先生はすごく裕福で思いつきで海外へ行ける人」と思われたようです。それはまったく違い、「優先順位が最高に高いから」です。息子たちの教育費に予算を組んでいまして、その中から一気に使ったに過ぎません。「息子が将来の夢へ進む方向」は変わっていなくて、今はこれが必要だと思ったから一気に優先度を上げたわけです。

 

ひとりで海外へ行く高校生

パスポートの手配から荷物の準備、搭乗、乗り換えなどなど、基本的にはひとりでやらせてみました。滞在中は別行動で、それぞれ好きなところへ行きました。自転車とモバイルWi-Fiを借りたので、次男の方がわたしより行動範囲が広かったです。

日中は別行動で、3時〜4時にホテルに戻り、少し休憩をしてからスーパーで買い出しをします。持って行った調理器具でご飯を作って食べ、お風呂に入って洗濯をしました。夜は、わたしは読書や仕事、次男は宿題をしました。取り決めは何もなくて、自然にできたお互いのペースでした。

 

わたしは外国語学部卒で、同級生の中には帰国子女がいっぱいいました。中学や高校で単独留学した子たちです。わたし自身も、大学生のときに留学しましたけど、お金を貯めて調べて手続きをするのは、当然、自分でした。親は何も知らないですし、聞いたこともありません。ですから、"高校生がひとりで海外へ行き、単独行動する"こと自体は、珍しくはないし、もっとすごいことをやっている子はいっぱいいます。

 ですが、少なくともわたしの同級生や先輩は、「親が裕福でなんとなく海外へ行った」人はほとんどおらず、英語が大好きで外国に興味があり、自分で調べまくる人ばかりでした。つまり、語学や海外そのものに大変な興味があったのです。

その人たちとわたしの息子は、今まで行きてきた道が明らかに違います。

 

 わたしは、意図的に「子供が大学生になったら躊躇なく海外へ行けるように」育てました。こうなるだろうと思っていましたが、世間で考えられているやり方とは全然違ったので、ひっそりと決行していました。今回、"海外に興味がなくても、英語ができなくても、どの子も世界に出て行ける"ことを確信したので、そのことを書こうと思います。

 

子どもが理解できる範囲で暮らす

 わたしは、"子どもが理解できる空間の範囲"をすごく大切にしました。

保育園の間は「歩いて行ける範囲」。歩ける範囲をどのくらい把握しているか観察をしました。町内の施設、図書館や民族資料館、神社、公園などによく行き、「自分の住んでいる街」が把握できるようにしました。

小学生のときは「自転車で行ける範囲」。次男は特にこの期間がとても重要で、今回の行動に直結していると思いました。自然に恵まれた地区だったために、いろんなところへ生き物探しの冒険に出かけていました。興味があるから少しずつ遠くへ、知らない場所へ、(親としては、あとから聞いてヒヤヒヤすることもありましたが)少しずつ自分の行動範囲を広げました。

 

「行ってみたい」「見てみたい」「知らないところには、もっと違う生き物がいるんじゃないか」、そういう"自分の中で発生した"モチベーションに従って、自分で自分の行動範囲の広げ方を学びました。「どういうことが危険なのか」ということも体験の中で学んだと思います。(いろいろありました・・・)

 

「見てみたい」と思って知らないところへ少しずつ行くのか、「ほら、ここに面白いものがあるよ!」と連れて行かれるか、それは本当に大きな差だと思うのです。そのためには、「安易にあちこち連れて行かず、暇にしておくこと」が必要でした。刺激のない毎日の中で、近所の生き物探しがとっておきの「新鮮な体験」でないと、危険を犯してまで行こうと思えないですから。

 

中学生では市外へひとりで行ってみること。高校は県外に。それにも「行ってみたい!市の向こうに何があるんだろう」という気持ちがいちばん大切ですから、その興味を育むことに重きを置きました。

 具体的には、

  • アミューズメントを用意しすぎない
  • 暇にさせる
  • 遠くに旅行しない

ということです。

 

そのため、今回、次男が初めて経験することは「海を超える」ということでした。そこは丁寧に体験させました。飛行機、時差、水、電気、お金、気候など、行く前に調べるポイントのヒントを与えました。でも、町内、市内、県内、国内と順調に行動範囲を広げていますから、何か肌で「こういうことが違うだろう」と知っているような感じがしました。

 行ってしまった後は、「市内を自転車で移動」ですから、知らない場所でもまったく平気でした。地図を調べ、交通ルールを調べ、あとは本当に好きに移動していました。「チャリ最高!チャリさえあれば、おれはどこにでも行ける!」と言っていました。

 

言葉をどうするか

多くの方は、子どもを海外へ行かせるためなのか、世界で活躍するためなのか、英語を幼い頃から習わせると思います。でもわたしは、それより何より、「知らない大人に向かって自分に必要なことを伝えられるか」ということを重視して育てました。これも、発達、性格、年齢に合わせて、段階を踏んで「必要なことは自分で言う」という練習をすることが大切だと思います。

 

また、知らない人と知り合いになることに躊躇しないこと。というより、むしろ、相手の言葉を使ってでもコミュニケーションを取りたいと思うことが大事で、その気持ちが育っていることを観察しました。

税関を通るときの会話シミュレーションは、教科書に載っているそうで、慌てて見直して練習しまして、実際には、思いもよらないことをたくさん聞かれましたが、なんとか対応していました。

わたしは、それでいいと思うんです。「あっ、そういえば、英語の教科書のあそこに書いてあった!」と思い出すだけで。だって、実際に税関は通れたんですから。「自分で通れた」という自信の方が大切です。

 

わたしは「どうせ英語が通じるだろう」と思って、失礼なことにまったくドイツ語を覚えずに行ったのですが、次男の方がお店での挨拶や常識を調べ、「ハロ」「トゥス(さよなら)」など、果敢にコミュニケーションを取っていました。

 

朝はブッフェ形式で、レストランの入り口で部屋番号を言ってチェックしてもらう必要があります。ただの数字でハードルがとても低いので、次男が言ったのですが、激しく聞き直されてしまい、心がポキンと折れたときがありました。

わたしは、とてもいい経験をしたと思って、「どんなに発音が悪くてもかっこ悪くても、わかってほしいという意思を持って、大きな声ではっきり口開けて言ってごらん。英語はそれが一番大事なんだよ」と教えました。これは本当に、日本の英語の授業では学ぶことができませんから。

 

異論もたくさんあると思いますが、実際に海外に行ってどのくらい英語が必要かは、目的によってまったく変わります。もっとも大切なことは、「伝えたい」「コミュニケーションを取りたい」「やりたいことがある」ということではないでしょうか。そのときに、持っている英語力を全力でフル稼働するかどうか。案外、「言えるのに言わない」子も多いのではないかと思います。

 

危険と情報

ベルリンの街のはずれに、ベルリンの壁に絵を描いたアート作品があります。次男がそこに行ったとき、着ぐるみが陽気に近づいてきて、「一緒に写真撮ろう!」って声をかけてきたそうなのですが、「No!撮らない」と振り切ったそうです。そう、もし写真を撮ったらお金を要求されるという手口だったのです。

わたしは知らなかったですが、長男も次男も、この手口のことを知っていました。みなさんは知ってましたか?

 

他にも、ひったくりやスマホ盗難など、わたし以上によく調べて注意していました。このことも、大人が「あれが危ない、これに気をつけろ」というより、実感として少しずつ危険を体験して、"自分で考えて自分の身を守らねば"という考えを持っていないといけません。

 

「そんなこと当たり前」ですよね。

 

でも、その「当たり前」が案外、育ってない子も多いのです。みなさんのお子さんはどうでしょうか。あれこれ言わなくても、自分の身は自分で守れるように"自然に"なっているでしょうか。わたしは"海外にも行かせられる"と思えるまでに16年かかりました。

 

今回、スマホWi-fiの必要性は身に沁みて理解できました。わたしは「苦労して自力で海外へ行く」ということに頑なにこだわっていたので、旅行会社も利用したことがなかったのです。そして、現地でもらえる地図を頼りに移動する、ということにもこだわっていました。

でも、モバイルWi-Fiスマホがあれば、高校生がなんでも自分で調べ、どこにでも行けることに感動しました。「どうしたらいい?」「どこへ行けばいい?」「なんて言えばいい?」と聞くことは一切ありませんでした。

 

まとめ

「海外へ行く」というのは、お金さえ出せば誰でもできることです。

でも、「子どもが自分の活動範囲を"世界"で捉えること」と海外旅行は全く違います。これからの時代は、ますます国境の壁は無くなり、"世界"で考えることでチャンスがいくらでも広がっていくと思います。いつでも出て行けるようにするために、

 

  1. 自分が生活している範囲を把握し、その外の世界を知りたいとワクワクすること
  2. 知らない人に「伝えるべきことを伝えたい」と思うこと
  3. 「情報と危険」を自分で調べて得られること

 

わたしは、この3つを育てておくのが大切なのではないかと考えました。そして、やはりこうしておけば、英語力、性格などに関係なく、世界に臆しない子に育つ、と確信しました。