わたしは運営している音楽教室ミューレでは、極力「きまり」を作りません。今日はなぜ作らないのか、書きたいと思います。
昨日、親子リトミック活動【おさんぽリトミック】のブログでこんな記事を書きました。
ピアノを触ってはいけないの?│おさんぽリトミック in 浜松
さっそく、こんなおたよりをいただきました。
メルマガ1号から読んでいますが、基礎編も面白く読ませてもらっています。
「レッスンの前は良いけれど、
レッスン中は、先生がピアノを弾くので、
さわらないでね。」
のくだり、読んでいて、これじゃん、正解これじゃん、と思ったけれど、読み進めるうちに、ミューレでの佳織先生なら確かにそういう方法を取りそうだー..てなりました。仕事上、大人の小集団を指導する時もあるのですが、指導する側としては、この時はこう、こんな場面ではこう、と決めてしまった方が、自分も周りにも分かりやすくてらくちんです。
どちらも読んでくださってありがとうございます。
そうですね、きまりを作ってしまうのが集団を動かそうと思うと、お互いに「楽」です。
では、なぜわたしは「楽」なきまりを作らないのでしょうか。
「きまり」という枠組みを作ってしまうと、「ちゃんとできる子」と「できない子」という差を作ってしまうんですね。そのとき、では「ちゃんと守れる子」っていうのは「人に迷惑をかけたな、悪かったな」って思っているかどうかっていうと、そうではないですよね。「守らない子」は「やーい、やーい、うるさくしてやれ!みんな困れ!」って思っているかというと、それもそうではない。
わたしの経験ではその差というのは、こうです。
・自己主張が強いか弱いか
・切り替えが早いか遅いか
・気が強いか弱いか
・好奇心が強いか弱いか
・こだわりが強いか弱いか
本来の目的である「お話の声が聞こえるようにするため」には関係ないことばかりなんです。
こうして並べてみると、やはり発達障がいの子などはトラブルなくきまりを守らせるのは少し難しいのですね。
すると、「発達に遅れがあるかも」なんて言われて、日々悩んでいるお母さんほど、このきまりに苦しめられ、定型発達児でおとなしい子、従順な子ほど楽になります。
ますます外に出て行くのがいやになりそうです。
ある日、こんなことがありました。
2才からミューレに通っているおとなしい男の子がいました。年中さんくらいまで、発表会ではお母さんのお膝から出られず、一緒に出ました。わたしがその子の声を聞いて談笑するようになったのは、どうかな〜、小学4年生くらいだったかな。そのぐらい、おとなしい子でした。
おとなしいからって自分の意見がないかっていうとそうではなくて、「みんなと同じ」とも思っていなくて、リトミックで意見を求めると、ちゃんと自分で考えられる子になりました。でも、おとなしいのはそのままでした。
小学校の2年生くらいのころかな、彼が何かを発言したときに、気の強い子が「聞こえなーい!!」って大きな声で言ったんですね。
それで、わたしは「そんな風に言えば何が解決するの?」とみんなに問いかけました。「どうするために?どうなったらいいって思ってる?」少しずつ、考えさせました。
「○○くんが何て言ってるか、聞きたい」
ってことになりました。
「じゃあ、誰がどうしたら聞こえる?」と聞くと、自分たちで
「近くに寄って、耳をすませばいい」
っていうことを導き出しました。
この子は2才からみんなの仲間なので、おとなしくて声が小さいってことは今に始まったことではないんです。そんなことはわかりきっているはずなのに、きまりを作ってしまうと、「発言者が大きな声でハキハキ言う」ということから、別な道を考えなくなるんですね。そして、何が目的だったのかも見失い、その子がどんな特性を持っていようが、「ちゃんときまりに従う」っていうことを強要してしまうんです。
この子は「聞こえなーい!」と言われたときは泣いてしまったんですが、この話し合いのあとは、相変わらずしゃべりはしませんけど、堂々と自信のある顔つきになり、より一層、ミューレが大好きになりました。今、中3ですけど、レッスン準備から片付け、イベントのときにも率先して働く子に育ちました。おとなしいけど、意見を求められたときにもじもじすることはありません。
そもそも、「聞こえなーい!」って言った子にも、なぜとっさにそのセリフを言ったのか、○○くんを痛めつけてやれ!って思ったのか、自分を振り返らせたところ、「学校で自分もそういう風に言われたから」とのことでした。そうして、そう言われた自分もいやだったはずなのに同じことを言ってしまう心理について、周りの子も「その気持ちも分かる。自分は悪くない!ちゃんとやってる!って言いたいから」と理解を示しました。
わたしは、子どもたちに(保護者様たちにも)
目的は何?
どうすればいい?
誰がやるのが一番手っ取り早く楽?
やってみたら目的は達成できた?
ダメなら別な方法はない?
常にこう考えるようにしむけるんです。
結果として、どんなトラブルにも臨機応変に対応できる子に育ちます。
遠回りに思えるかもしれませんが、こうして育った集団をまとめるのは、いくつものきまりに従わせるよりずっと楽です。
さて、「ピアノを触らせていいかどうか」に戻りましょう。
わたしは、その場にいるどの方にも「今は先生の声を聞きたいから」「今は先生のピアノでリトミックしたいから」という目的を考えてもらうようにします。そのためにどうしたらいいか考えます。
ものすごくこだわりが強くて、引っぺがすとギャーッって泣いてのけぞる子がいたとします。ピアノの側まで行ってもジーッと見つめるだけでちっとも邪魔にならない子がいたとします。
たいへんな方をみんなで助け、守り、「たいへんだね、ありがとね、おかげで聞けたよ」っていたわる、そういう集団にしたいのです。
なぜそうするかというと、この、「ギャーッとピアノからひっぺがされる子」って、あるとき、ものすごい発想力を発揮して、グループを素敵に引っ張ってくれることがあるからです。だから、このときはたいへんでも、その特性を持ったまま、いてもらわないと困るんです。
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