検診は子育てテスト?

「検診で落ち着きがなくて、いつもできることができなくて、引っかかってしまった」

 

「発達の教室に行くように言われた。

行くのはいいんだけど、あんまりにもひどい言い方で、わたしの子育てが間違ってたのかとショックだった」

 

ものすご〜〜くよく聞く話です。

いい感じで子育てを進めていたお母さんが、1才半の検診を受けたあと、ぽろぽろと涙を流しながら、「先生、聞いてください・・・。」ってやってきます。

何人ものお母さんから同じ話を聞き、その後、その子がどんな発達をしたか見てきた経験から、わたしが検診について感じていることをお話します。

 

現在、日本では毎年、100万人前後の赤ちゃんが生まれます。

発達障がいの子は、6%程度と言われていますから、毎年6万人です。

平成27年度の虐待件数は、乳児だけではありませんが、10万件を超えています。

全国の保険師さんの人数は5万人です。

 

ここから考えてみましょう。

 

わたしもそうでしたけど、お母さんたちは1年半の間、自分の子だけを見て毎日不安の中で子育てをし、一生に一度だけの1才半検診を迎えます。

けれど、日本全国の保険師さんから見たら、すごい数の子どもを毎月毎月見ています。

そして、この中から発達に遅れがある恐れのある子や虐待の疑いがある子を発見します。

受ける方からすると、引っかからないかビクビクしてしまいますが、そもそも、なぜ発見するかというと、できるだけ早い時期にしかるべき対応をしてあげると、その後、苦労なく幼稚園や学校に馴染める子が、気づかれなくて対応されなかったために、親も子も不幸な育ちをしてしまうことが多いからです。

 

「しかるべきサポートを受ければ幸せになる子を見逃してしまった(ひょっとしたら命を落とすケースも)・・・」「実はサポートが不要な子を発達の専門家に見てもらっちゃった」、どちらがまずいでしょうか。

答えは明白ですよね。

 

保険師さんが発達の診断が下せるわけではありません。

保険師さんのお仕事は、サポートの必要な子を、しかるべき専門家の元へ無事に送り届けることです。

何より責任重大なことは、「見逃してしまうこと」だと思います。そのため、5万人が「自分の感覚でなんとなく」じゃなく、誰もが平等にできるやり方で、日本全国だれがどこで見ても同じようにチェックする必要があります。

積み木とか指差しとか。「いつもはできるのにたまたまできなくて引っかかってしまった(>_<)!」と皆さんがよく言う検査方法です。

保険師さんとしては、「この子は、いつもはできるんだろうな」と、たとえ思ったとしても、自分の勝手な判断で「今日のところは見逃しましょう」とはできないわけですよね。そんなことをしたら、日本全国で同様にチェックして、不幸な子育てを少しでも減らしましょう、という取り組みが無になってしまいますから。

 

だから、受ける方はまるで試験みたいに戦々恐々として、引っかかることが重大な宣告のように感じてしまうけれど、本来の目的からすると、もっと気楽にかまえてもいいのかもしれません。

万が一、本当にサポートが必要な子だった場合は、合う先生に出会って早く対策を始めるに越したことはありません。

見逃されるより、引っかかった方が、後から考えたらありがたいかもしれません。

 

次に、よく言われる「ひどい言い方をされた」という点です。

 

保険師さんの中には残念ながら、言葉の選び方が残念な方や経験の少ない方、相手の気持ちに思いが至らない方もいらっしゃると思います。

できれば当たりたくないけれども、そういう方に残念ながら当たってしまうこともゼロではありません。

だからといって「というわけで傷ついても気にしないことよ〜、アハハ〜」というわけにはいきませんね。

 

わたしは、こんな風に信じたいのです。

 

一生懸命育ててきた、あるお母さんを自分の言葉で傷つけてしまった保険師さんは、その後、5年後か10年後か、いつかきっと、そのことに気づいて、「あのときは未熟で傷つけてしまって本当にごめんなさい」と、心で手を合わせながら、もう二度とあのような思いはさせまいと若いお母さん方にていねいに接してる、と。

あなた自身には謝罪も訂正もないかもしれないけど、きっと、その後の大勢のお母さんに廻り廻って懺悔がきっと活きている、って。

 

それから、この仕事をして、大勢の子育てを見つめていると、世の中には、驚くほど酷くて、かなりキツい言い方をしないと子どもの発達を案じて専門家のところへ連れて行かないお母さんも、残念ながらいらっしゃるのだと思います。

虐待の数は年々増えていて、1週間にひとり、子どもが亡くなっているそうです。

半ば脅すような言い方で緊迫感を与えないと救えない子どももいるかもしれません。

 

心を痛めているお母さん方へ。

多くのお母さんと子どもには何の問題もないし、傷つくようなことを聞く謂れはないのだけれど、日本全国で見たときに検診で本当に大切なことは、

 

「救える子を見逃さないようにすること」

「とんでもないお母さんにキツく言って自覚させること」

 

(本当かどうか知らないけど)そんな風に考えてみてください。

 

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少し話がずれるかもしれないけど、わたしがこんな風に考えるようになったきっかけをお話します。

わたしが子どもを生んだとき、核家族だったのですが、ご近所でほんとうに親切に助けてくださった方がいらっしゃいました。

お子さまはもう大学生と成人で、育児の大先輩。

いつも感謝の気持ちをどうやってお返ししたら良いのか・・・って思ってました。

 

それまでは「自分のことは自分でやる」「人に迷惑をかけない」「やってもらったら同じだけお返しする」ということを常識だと思って生きてきたのに、やっていただく一方で、何の余裕もないし、相手の方はわたしなんかにして欲しいことはひとつもなく・・・。

 

そんなとき、心苦しい気持ちを伝えたところ、

 

「いいのよ、こういうのは順番だから。」

 

って言われたのです。

 

それ以来、「この子を無事に育てるために、手を貸してくださっているのだから、子どものことだけ考えて、ありがたく助けてもらおう。わたしの子育てが終わったら、この方に直接ではなく、次の世代のお母さんに同じことをしてお返ししよう。」と考えるようになりました。

 

社会って、そんな風にして個人対個人だけじゃなく、回っていく恩があったり、余裕がある者が助けたりすることで全体が幸せになるものなんだ、って。

 

ケアの必要な「少数の子どものために」もしくは「少数のお母さんのために」、検診の「グレー」の範囲を広くしておくことが必要で、社会で生きていくためには、全体の一部になってあげることも必要なんですね。

疑われるだけでも辛いけどね。
人を救うため、って思ってみてください。